共同ブログ

ひきこもり小説のポルノ中毒編

顔を真っ赤にしヨダレを垂らしている男

ひきこもり小説のポルノ中毒編を書いてもらいました。性描写があります。


『蟲』

 安っぽく、丈の短いメイド服のコスチュームを着た女が床を四つん這いで拭き掃除している。おもむろに男が女の背後に近寄り、膝をついて、揺れている女の尻からショーツをおろす。男が手にしていたバイブを女の秘所に捩じ込み、女は甲高い悲鳴をあげた。背を反らしてわざとらしく喘ぐ女の顔は、よく見たら若くはなさそうだった。
 そんな滑稽にも思える映像を観ながら、青年はノートパソコンの前で陰茎にティッシュを当てながら扱いている。まだ青年と呼べる年齢のはずなのだが、髭の手入れをいっさいしていないせいか老けて見えた。
 息を荒げる青年のそばをゴキブリが通ったが、気にせず動かす手を速める。やがて、低い呻きを漏らし、動きを止めると湿ったティッシュを床に置いてあるカラのカップラーメンの容器へ捨てた。質の低い動画で抜いてしまった自分へ溜め息を吐きつつ、煙草に火を点けて、マウスを操作して次の動画を探す。
 そろそろ煙草がなくなってしまう。母親へ頼まなければ。……青年にはもう、一月の煙草代を賄えるほどの貯金もなかった。

 そこそこ良い大学を出て、そこそこ良い会社に就職した。そして、学生時代にしばしばしていたバイトとは比べ物にならない厳しさに青年は挫折した。なにか別の仕事を探そうとも思ったが、上司の怒号がトラウマのようになっており、仕事情報のサイトを眺めても面接を受けにいく勇気が湧かない。
 そのうち、仕事情報のサイトなんか開かず、ポルノ動画のサイトばかりを開いて現実逃避をするようになった。煙草をぱかぱか吸いながらもう溜めている精液もなく、エロアニメをぼんやり眺める。
 最後の一本を灰皿がわりにしている小皿に潰し、まだ一箱くらいストックがあるだろうと重い腰をあげて、トイレと風呂以外であまり出ない部屋を出た。食事は運ばせている。階段をおりて、リビングへ向かう。
 テーブルの上には母親が置いていったのであろう煙草が一箱と、ラップをした食事。今日は遅くなる旨が一言記されたメモ。女手ひとつで自分を育ててくれた母親は何かを諦めたのか、もう何も言わずに食事と嗜好品の世話を最低限してくれる。
 最初は罪悪感も覚えた青年だったが、今は罪悪も感謝の念も感じない。煙草と食事を持ってさっさと私室へ戻り、ポルノの海を漂う。

 なにも良い変化はないまま時は無為に過ぎていく。こんな生活を続けているうちにトイレに立つのも億劫になり、度々ペットボトルへ用を足した。そして最悪の変化、母親が過労で倒れ、そのまま亡くなった。
 しかし、青年に出来ることはもう、何もなかった。


2016年12月27日 火曜日 おいなり

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